健康診断に必要以上に振り回されない ことも大切です。体重・コレステロール値など、いわゆる健康常識のよりどころとされる数値にとらわれるな、という専門家や医者は意外にも多く、そもそも「健康診断の基準」から疑ってかからなくてはいけません。
健康診断に必要以上に振り回されない 細かな数値には一喜一憂しない
健康診断で使われている数値は、年齢を問わず 20 ~ 30 代の若い人を基準にしたものです。4 0代、50 代、60 代として健康かどうかを知ろうとしても、20 〜 30 代の健康基準に当てはめれば、不健康と診断されても当たり前です。
本来なら、年代ごとの健康基準があればいいのですが、そこまで細かい基準をつくるのは難しく、若い年代の基準を用いざるをえないのです。
たとえば70代でどこも悪いところがなく完壁に健康な人というのは少ないですから、基準値を集めて決めることができません。医者の教科書にもそんな数値は載っていません。
ただ、高齢者ならこのくらいの数値で大丈夫だろう、というようなものです。大きな目安とされる血圧も、歳をとっていけば血管に弾力がなくなり、数値が上がっていくのが普通です。
若い人の基準値と比べて「大変だ。高血圧だから脳溢血になってしまう」と不安にかられるほうが、よほど血圧を高くしてしまいます。
この血圧、基準値そのものがこの 40 年でずいぶん変わってきました。1970 年代には、WHO (世界保健機関) によって、最高血圧160 mmHG 以上、最低血圧 95 mHg 以上が高血圧とされ、しばらくはそれが世界的な標準でした。
その後、数値の見直しがされ、そのたびに基準がどんどん下がってきたのです。現在は 135 mmHg 未満、最低血圧が 85 mmHg 未満です。、これを超えると降圧剤を処方されます。基準値を低くしていけば、より安全だということかもしれませんが、降圧剤を売りたい製薬業界の思惑でもあるのかと勘ぐりたくなる変化です。
ちなみに、厚生労働省の調査によれば、日本人 40 〜 74 歳のうち、男性は約6割、女性は約 4 割が高血圧 (135 / 90 以上) になっています。
日本人男性の約 6 割が病気と考えるべきでしょうか。血圧は、最高血圧のほうが注目されがちですが、実は気をつけなければいけないのは、最低血圧のほうです。
下の数字は、血管の柔らかさを反映しているからです。下の数字が 100 ~ 110 以上ある場合は気をつけなければいけません。基本的に血圧は、上が 180 下が 100 レベルになれば注意が必要です。しかし、上の数値が 150 以下、高齢の方なら 160 位でも、下の血圧が 100 以下であれば薬など飲まずに放っておいても大丈夫なのです。
まじめな人ほど病気になる…これだけの理由
会社や自治体の健康診断で病気が見つかるケースも多く、毎年欠かさず健康診断を受けている人は多いでしょう。
自分の体の状態に関心を持って、健康を心がけることはいいことですが、その数値にとらわれて一喜一憂するのは問題です。
20 年以上前ですが、「フィンランド症候群」という驚きの調査結果が話題になりました。フィンランドは年金制度の充実した国で、会社を辞めても十分食べていけるため、全体に健康管理が徹底されていません。
1991 年に JAMA に発表された資料等をもとにした当時のマスコミの造語です。 毎日の生活において健康に気を煩わせるほどそれがストレスになり,かえって健康を気にかけることが ない人に比べて,後年になって健康を害する傾向があるというほどのことのようです
アルコール中毒やすい臓疾患も多く、寿命も短いという状況でした。そこでフィンランド保健局が、1974 年から 15 年がかりで調査を行なったのです。生活環境も健康状態も似ている 40 〜 45 歳の裕福な男性実業家 1200 人を対象に、彼らを 6 0 0 人ずつの 2 つのグループに分けました。
一方は、酒もタバコも制限し、食事指導を行ない、きちんとした生活リズムを守らせました。定期的に健康診断を受けてもらい、数値が悪ければ薬を投与するなど、しっかり健康管理を行なう「真面目群」としました。
もう一方は、酒もタバコも食事も本人任せ、健康診断も一切しないで定期的に健康調査票に回答してもらうだけの「不真面目群」としました。
その状態を5年間続け、10年間の観察期間をおき、15年後に結果をまとめました。すると、厳しく健康管理を続けていた「真面目群」のほうが「不真面目群」よりもがんや心臓疾患系の病気にかかる人も、死亡者数もはるかに多かったのです。
しかも自殺で亡くなった人が多いのも「真面目群」でした。そもそもこの調査は、健康管理の重要性をフィンランド国民にデータで示す目的で実施されたのですが、図らずも逆の結果が出てしまったわけです。
なぜこのような結果になったのか、2つの理由が指摘されました。まず、当時はコレステロールが低いほどいいという観念があり、徹底した数億管理でコレステロールを抑えたこと。
もう1つは、ストイックな暮らしを強いられてストレスがたまり、免疫の力が弱ったのではないかということ。この2 つは、今から考えると見事に正しいと言えます。「真面目群」に自殺者が多かったのは、コレステロール値を下げる薬を飲むことで、うつ状態になったことも考えられます。健康管理をやりすぎるのも健康に悪い健康法と言えるのです。
健康診断は、自分の健康状態を確認し、早期に異常を発見するための大切な機会ですが、結果に一喜一憂しすぎると、心身のバランスを崩してしまうことがあります。健康診断の結果に振り回されず、冷静に受け止めるための考え方や対策を以下にまとめます。
1. 健康診断の目的を理解する
- 目的は早期発見と予防:健康診断は、病気の有無を確認することが目的ではなく、あくまで異常の早期発見と予防が目的です。異常が見つかっても、それがすぐに重大な病気を意味するわけではありません。
- リスク評価の一環:診断結果は、生活習慣や体調管理のリスク評価の一つに過ぎません。リスクがあるとわかれば、改善の機会と捉えることが重要です。
2. 結果に過剰反応しないための心構え
- 「参考値」を超えてもすぐに心配しない:多くの健康診断の項目には「基準値」が設定されていますが、これらは一般的な健康状態を表すものであり、個々の身体状態や年齢、性別によって異なります。基準値を少し外れても大きな問題ではないことが多いです。
- 単一の数値にこだわらない:一つの検査結果だけでなく、全体的な健康状態を総合的に判断することが大切です。個々の数値は体調やストレス、食事など一時的な要因にも左右されることがあります。
3. 冷静に対処する方法
- 検査結果を医師に相談する:心配な結果が出た場合は、自分で判断せずに医師に相談しましょう。結果の意味や、必要な対策について専門家の意見を聞くことが大切です。
- 定期的な受診で経過を観察する:異常があった場合でも、すぐに病気と決めつけるのではなく、定期的に検査を行い、経過を観察することが重要です。変化があるかどうかを確認し、必要に応じて生活習慣を見直すことが効果的です。
4. 生活習慣の見直し
- 健康診断結果を改善のチャンスと捉える:結果を見て、「改善が必要」と判断された場合は、生活習慣の見直しを行いましょう。例えば、食生活、運動、睡眠、ストレス管理などを見直すことが健康改善につながります。
- 無理のない改善計画を立てる:極端な食事制限や過度な運動は、かえって身体に負担をかけることがあります。自分に合った無理のない計画を立て、少しずつ取り組むことが長続きのコツです。
5. ストレス管理の工夫
- 診断結果に向き合うためのメンタルケア:結果に対する不安や心配が続く場合、メンタルケアも重要です。瞑想や深呼吸、リラクゼーションの時間を設けることで、心の安定を図りましょう。
- ポジティブな視点を持つ:健康診断結果を「怖いもの」ではなく、「自分の体を知るためのツール」としてポジティブに捉えましょう。異常があったとしても、それを知ることができたからこそ、適切な対処や予防が可能になると考えることが大切です。
6. 情報の過剰摂取に注意する
- インターネットの情報に振り回されない:健康診断の結果について、インターネットで検索すると、多くの情報が出てきますが、その中には不正確なものや、過度に恐怖を煽るようなものもあります。情報源の信頼性を確認し、医師や専門家に直接相談することを優先しましょう。
- 他人と比べない:健康診断の結果は個々人の身体状況や生活習慣に大きく左右されます。他人の結果と比べることなく、自分自身の健康状態を見つめることが大切です。
7. 健康診断を「健康への指針」として捉える
- 健康診断は、あくまで「健康維持のための指針」として活用しましょう。自分自身の体調を見直し、改善するためのきっかけと考えることで、心の負担を軽減できます。
健康診断の結果に一喜一憂せず、冷静に対処することで、より良い健康状態を保つことができます。自分の体調や心の状態に合わせて、適切な対応をしていくことが大切です。
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