最近の研究で、欧米でのうつ病の増加と、寒冷地で獲れる脂肪分の多い魚の消費量の低下が関連づけられたことで、栄養と感情との関係が注目されています。
脂肪分の多い魚にはオメガ3脂肪酸が豊富に含まれています。オメガ3脂肪酸は体内の多くのシステム、とくに脳を正常に機能させるために不可欠な物質です。
オメガ3 脂肪酸にはリノレン酸が含まれており、リノレン酸は体内で代謝されてエイコサペンタエン酸(E P A)とドコサヘキサエン酸(DHA)に変化します。
DHAは網膜と脳のたんばく質に集中しており、脳の信号伝達に重要な脳細胞膜を機能させる働きをします。欧米ではこの50年間、オメガ3脂肪酸の消費量が激減しており、その結果、DHA消費量が低下しています。その反対に、不飽和脂肪酸や加工食品に多く含まれるオメガ6脂肪酸の消費量は増えています。
魚の消費量の低下に加えて、同じくオメガ3脂肪酸を多く含む全穀類や種子類などもあまり食べなくなっています。オメガ3脂肪酸の消費量が全体的に低下していることがDHA欠乏の原因となって、健康、とくに精神面にさまざまな影響を与えているのかもしれません。
「アメリカ臨床栄養」誌に発表された記事では、NIH のジョセフ・ヒベルン博士とノーマン・セーレム博士が、最近の北アメリカでのうつ病の増加と、DHA消費量の低下を関連づけています。
彼らは十年越しの医学の謎を解明しようとして、このことを発見しました。1984年に発表された非常に有名な研究によると、コレステロール値の低い食事を与えると、うつ病が増加し、原因不明の自殺が増加するということです。
その後の研究ではまったく逆の結果、つまり心臓によい食事を与えると幸福感を感じることがわかりました。なぜ、このような結果になるのでしょうか?
ヒベルン博士とセーレム博士が2つの研究を再考察したところ、新鮮な魚が豊富に獲れる、海の近くに暮らす人がもっとも幸福感を感じ、新鮮な魚を入手しにくい内陸部の人は気分が滅入りやすいという驚くべき結論に達しました。
つまり、うつ病はオメガ3脂肪酸の消費量が多い土地ではごく稀で、逆にオメガ3脂肪酸の消費量が少ない土地では多く見られるのです。
オメガ3脂肪酸やDHAを十分に摂るためには脂肪分の多い魚( サケ、スズキ、サバ、マグロ、イワシなど)を多く食べるか、サプリメントを摂ることです。DHA サプリメントはカプセル状になっています。250mgのカプセルを1日3錠摂取しましょう。
コメント