創造的・思考的な仕事は「勝負の時間」に

「時間管理術」や「不安との向き合い方」を医学的な見地から見ていきたいと思います。いわゆるビジネス書、自己啓発書の類には時間管理に関する記述が多く見られますが、医学的な見地から「もっとも理にかなった時間管理術」というのは、ほとんど見たことがありません。

ぜひとも参考にしてほしいと思います。そもそも人間の体には、ものを考えるのに適した状態と、そうでない状態があります。交感神経が跳ね上がっている状態は、どう考えても思考には向きません。心拍数が高く、血管が収縮し、血流が悪くなっているので、脳に十分なブドウ糖が送られません。

おまけに呼吸が浅く、小刻みになっているので、集中力も低下しています。そんな状態で何かを考えようとしても、まったく脳は機能しません。

それとは逆に、副交感神経が優位で、交感神経がレベルダウンしている時間も、思考的、創造的な仕事には向きません。食事の後、夜寝る前などがその代表的な時間です。

では、いったいどの状態が思考的、創造的作業にもっとも適しているのでしょうか。それは「交感神経、副交感神経ともに高いレベルを維持しているとき」といえます。

言葉にするとわかりにくいかもしれませんが、要するにそれは「午前中」ということです。

思考のゴールデンタイムは午前中

人間は朝の時間に副交感神経優位から交感神経優位に切り替わります。1一日の活動を始めるために、体がアクセルを踏みはじめる状態です。

その後、段々と副交感神経は下がっていくのですが、午前中はまだ副交感神経が高いレベルを維持できています。それだけ血流が良く、脳に十分なブドウ糖が供給されやすい状態でありながら、交感神経の働きによって体が活動的にもなっている。

それが午前中。まさに思考のゴールデンタイムです。1日における「勝負の時間」と表現してもいいでしょう。

ぜひともその時間に「もっとも頭を使う仕事」を割り振ってください。新しい企画を考える、問題点を精査し解決策を探る、情報を分析して新たな戦略を練るなど、「頭を使う仕事」はとにかくこの時間に行うべきです。

このもっとも頭が働く「勝負の時間」にメールチェックをしたり、何かしらの連絡や報告をするのは、医学的にいって非効率。特に40代、50代は副交感神経のレベルが下がってきている年代なので、「勝負の時間」を逃してしまうと、その日のパフォーマンスは相当下がってしまいます。

時間管理の基本は「どの時間に、何の作業を割り振るか」。仕事内容や職場によって思うようなスケジュールが組めないことも多いでしょうが、「勝負の時間に思考的な仕事をする」というのは、もっとも優先すべき時間管理の考え方です。ぜひとも「勝負の時間」を無駄にしないでください。

時間を3つのブロックに分ける

さらにもう少し細分化して「勝負の時間の使い方」について考えてみましょう。元来、人の集中力は高閣半しか続きません。これは医学的、肉体的に証明されていることなので、(多少の個人差はあるにせよ) 2時間も、3時間も高いレベルの集中力は続きません。

そこで、午前中に「頭を使う仕事」をする際、さらに時間を2つか、3つに分けて考える必要があります。
2つに分けるか、3つに分けるかは、それぞれやりやすいほうで構いませんが、私は通常「3つに分ける(1時間をワンブロックにする)」という方法を採ってといます。

  1. 9時から10時
  2. 10時から11時
  3. 11時から12時

この3つのブロックに「それぞれ何をするか」をあらかじめ決めておくのです。

じつは、この「決めておく」というのがとても重要。朝、会社に来てから「今日は何をしようかな」と考えること自体、「勝負の時間」を無駄にしますし、「どうしようかな?」という小さな迷いも、副交感神朋経を下げる要因になります。

そんなことは前日に決めておいて、できるだけスムーズに、余計な負担をかけない状態で1日の仕事をスタートさせます。すると、自律神経のバランスが整ったまま仕事に入っていけるので、すぐに理想的な集中状態をつくることができます。とても細かいことのように感じるかもしれませんが、優れたパフォーマンスを安定的に発揮するには、そのくらい繊細な意識を持って、副交感神経を高める(あるいは下げない) 工夫が必要です。

必ず休憩を入れる

ワンブロック1時間~1.5時間)が終了したら、必ず一度休憩を入れ、副交感神経を高めるためのエクササイズを何かしら実施してくだざい。

もっとも簡単なのは「1対2の呼吸」ですし、階段を一階分ゆっくりと上り下りするのでもいいでしょう。階段の上り下りは、ウォーキングと同じ「タッタッタッ」というリズムがあるので、体が疲れない程度であれば副交感神経を自然に高める効果があります。
そのはか、可能ならば一度外へ出て空を見たり、風を感じながら「1対2の呼吸」ができれば最高です。

いずれにしても、1時間集中して仕事をしていれば、交感神経はかなり高まっているはずです。デスクワークをしている人なら、同じ姿勢が続き、血流が悪くなっているでしょう。

実際には1時間程度の仕事をしただけでは、「疲れたぁ」という自覚症状はあまりないかもしれません。しかし、体の状態は「本当の健康体」から遠ざかり、集中力は確実に低下しています。

この段階を見逃さず、リセットすることが非常に大切。それ以上、交感神経が上昇し、副交感神経がが下がってしまうと、なかなかリカバリーがきかなくなるからです。40代、50代の方たちは特にこの点を意識しておいてください。

自分の肉体に即した時間管理

午後の時間は、仕事によって(あるいは人によって)使い方はさまざまでしょうが、午後の早い時間は「人と会う予定」を入れるように意識しています。

午前中は徹底した頭脳労働に従事して、軽い昼食を食べた後は人と会う。人と会って話していると適度に交感神経が高まってくるのですが、1~2時間のミーティングを1つ、2つこなすというのは、非常にリズムのいい時間の使い方です。

そして夕方になったら、副交感神経が高まっていくのを阻害しないよう徐々にクールダウンに入っていきます。オフィスを出る前にはデスク周りを1ヶ所だけ片づけて、それが終わったら落ち着いた気持ちで家に帰る。
仕事の最後の1ヶ所だけ片付ける「リセット」方法が副交感神経に働きかけてくれるのです。

これが、自律神経の働きに則った、もっとも医学的な1日の流れといえるのではないでしょうか?
もちろん、頭脳を酷使する生産的なミーティングなら午前中にセットしたほうがいいでしょうし、定例の会議が入っている場合など、相応にカスタマイズは必要でしょう。

しかし、いかなる場合でも、自分の肉体をよく知ったうえで、理にかなった時間管理をすることが私たちには必要です。はっきりいって40代、50代は、仕事の質と量が上がっている反面、肉体的おとろには若い頃より確実に衰えています。

そのギャップを埋めるためにも、「どの時間に、何をするか」というマッチングを、よりシビアに考えなければならないのです。「ゆっくり生きる」と「自分の体に即したシビアな時間管理」というと、一見相反するように感じますが、決してそうではありません。
より効果的な時間の使い方ができるからこそ、生産性が上がり、過度に忙しくなるのを防ぎ、結果ゆっくり生きることができます。
自律神経の働きに逆らわないいわゆるゆっくり生きる達人たちは、たいてい時間の使い方がうまいのです。しかし、これは誰もができるはずです。

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