激痛で知られる「痛風発作」や、さまざまを合併症を引き起こす「高尿酸血症」。これは、どんな人に起きやすいのでしょうか?
血液中の尿酸が過剰になり、「痛風発作」を引き起こす
「痛風」とは、激しい痛みを伴う関節炎の発作(痛風発作)が起きる病気で、その背景には「尿酸値」が高い「高尿酸血症」が存在します。
高尿酸血症の状態が長く続くと、痛風発作を起こしやすいだけではなく、高血圧、脂質異常症、動脈硬化による心筋梗塞や脳血管障害など、さまざまな合併症を起こしやすくなることが、最近わかってきています。
- 最近の傾向最近、痛風のに悩む方は増加傾向にあります。厚生労働省の調査では、痛風で通院している患者数は1995年におよそ42万人、04年にはおよ87万人と推計されており、この間だけでも2倍以上に増加しています。また、痛風といえば、以前は「中高年の男性に多い病気」でしたが、最近は若い年代での発症が増えているのが特徴です。痛風の発症が多い年代は、65年の調査では40~50でしたが、4~5年後の調査では20~30歳代で、最も多いのが40歳代という結果でしたこれには、食生活の欧米化や運動不足など、子どものころからの生活習慣がかかわっていると考えられています。
- 尿酸とは?「尿酸」は、細胞が新陳代謝する際に、細胞の核などに含まれる「プリン体」が分解してできる老廃物です。エネルギー代謝の過程でも、プリン体から尿酸がつくられます。プリン体のほとんどは体内でつくられますが、体外から取り入れる食べ物にもプリン体が含まれています。プリン体は肝臓に集められ、分解されて尿酸がつくられます。尿酸は主に腎臓で濾過され、尿とともに排泄されます。肝臓で分解されるプリン体のうち、食べ物由来のものの割合はおよそ2剖です。
- 痛風発作が起きる仕組み誰の体内にも常に一定量の尿酸が存在しています。これが「尿酸プール」で、尿酸をつくる作用と排泄する作用のバランスがとれていれば、尿酸プールは一定に保たれます。ところが、尿酸が過剰につくられたり排泄機能が低下したりして、体内の尿酸が多くなりすぎると、血液中の尿酸も過剰になつてしまいます。血液中の尿酸値が7mg/dlを超えると、「高尿酸血症」と診断されます。
尿酸値が高い状態が続くと、血液中に溶けきれなくなつた尿酸が結晶となって、足の指などの関節に蓄積します。増えすまぎた結晶が関節の軟骨から鰍がれ落ちると、白血球が剥がれ落ちた結晶を異物とみなして攻撃します。その際に白血球から放出される物質によって、腫れ、熟、激しい痛みなどを伴う炎症が起こります。
これが「痛風発作」です。痛風発作の多くが、足の親指の付け根の関節に起こります。治療を受けなくても、通常、1週間ほどで激しい痛みは治まります。しかし、尿酸値が高い状態を放置すれば、多くの場合、発作を繰り返します。痛風発作を繰り返すうちに、尿こぶ酸の結晶が皮膚の下にもたまり、痛状の「痛風結節」が生じることもあります。
一般に、尿酸値が高ければ高いほど、また尿酸値の高い期間が長ければ長いほど、痛風発作は起こりやすくなります。しかし、基準値はあくまで目安で、尿酸値が7mg/dlを少し超えた状態で発作を起こすこともあれば、9mg/dlを超えていても、発作を起こさないこともあります。
尿酸値を下げて痛風を治すための知識と習慣
尿酸値と生活習慣
食事、飲酒、ストレスなど、生活習慣が尿酸値を上げる原因に
「高尿酸血症」は、生活習慣と深いかかわりがあるほか、体質や性格なども関係しているといわれています。以下の項目で当てはまる数が多いほど高尿酸血症・痛風になりやすいといえます。
- 男性痛風は圧倒的に男性に多い病気です。成人の平均的な尿酸値は、男性のほうが女性より高く、男性のほうが高尿酸血症・痛風になりやすいといえます。これは、女性ホルモンに尿酸の排泄を促す作用があるためだと考えられています。
- 肥満肥満があると、尿酸を排泄する作用が低下し、尿酸値が上がりやすかったり、合併症を起こしやすくな*ります。B MIが高い人ほど尿酸値が高いというデータがあります。
- 肉食中心高エネルギーの食品をとり続けることは肥満を招きやすく、ひいては尿酸値を上げることにつながります。レバーなどプリン体の多い食品をとりすぎることにも注意が必要です。
- お酒が多いビールにはプリン体が多いことががわかっています。また、同じ食卓を囲むなど、痛風を起こしやすい生活習慣を共有していることも関係しているのかもしれません。体が多いことが知られていますが、ビールだけでなく、どんな種類のアルコール飲料にも尿酸値を上げる作用があります。これは、アルコールが分解される際にはプリン体も分解されるためです。また、大量の飲酒は、腎臓が尿酸を排泄する機能を低下させます。
- 水分摂取が少ない尿酸は主に腎臓から尿とともに排泄されるので、尿量が減少すると尿酸を排泄する量も減少します。
- ストレスが多い仕組みが解明されているわけではありませんが、過度のストレスは尿酸値を上げることが認められています。
- 家族内に痛風患者がいる痛風を起こしやすい体質であることがわかっています。また、同じ食卓を囲むなど、痛風を起こしやすい生活習慣を共有していることも関係しているのかもしれません。
- 激しい運動をするウォーキングなどの有酸素運動は、尿酸値に影響を与えません。しかし、筋力トレーニングや短距離走などの無酸素運動は、プリンこうしん体の分解を克進させたり、尿酸を排泄する作用を低下させたりします。また、尿酸値が高い患者さんの性格には、「何事にも積極的」「行動力がある」「自己主張が強い」「責任感が強い」などの共通点が多いことがわかっています。
チェック表で当てはまる項目が多い場合は、尿酸値が高い可能性があるので、尿酸値を調べるべきです。医療機関では、血液を採取し、血清中の尿酸の濃度を調べます。その日のうちに結果がわかることもありますが、数日かかることもあります。
また、職場の健康診断や自治体の特定健診の血液検査の項目に尿酸値が含まれている場合もあります。尿酸値が高いことがわかった場合は、これまで痛風発作を起こしたことがなくても、尿酸値を適正な値に戻すとともに、合併症の有無を調べることが大切です。
痛風の合併症
痛風発作の激痛が治まっても、「メタポリックシンドローム」や、「心筋梗塞」などの危険性がなくなったわけではありません。
高尿酸血症の合併症
- メタボとの関係「メタポリックシンドローム」との関係尿酸値と「メタポリックシンドローム」との関係について調べたアメリカの調査では、尿酸値が高い人ほど、メタポリックシンドロームを伴うことが報告されいます。メタポリックシンドロームとは、内臓脂肪型肥満に加え、血圧の上昇、脂質異常、耐糖能異常が複数起こつている状態のことです。日本でも、尿酸値とメタポリックシンドロームには、密接な関係があると考えられています。
- 腎臓障害などの合併症「痛風」は、「高尿酸血症」が長期間続くことで起こるため、高尿酸血症の合併症の1つと考えることができます。また、高尿酸血症には、腎臓障害や尿路結石などの合併症もよく起こります。
- 合併しやすい生活習慣病など高尿酸血症には、「食べすぎ」「飲みすぎ」「運動不足」などの生活習慣が大きくかかわっています。このような生活習慣は、高尿酸血症以外の生活習慣病などにもかかわりが深いため、次のような生活習慣病を合併しやすいのです。
腎臓障害尿酸のほとんどは、腎臓を経て尿とともに排泄されます。高尿酸血症が長期間続くと、結晶化した尿酸が、腎臓の組織に沈着し、腎臓障害が起こりやすくなります(痛風腎)。すると、尿酸の排泄が妨げられ、さらに尿酸値が上がりやすくなるという悪循環に陥ります。
尿路結石腎臓に尿酸の結晶が固まった結石ができることがあります。結石が尿管に移動し、尿管が傷つけられて、激しい痛みが生じたり、血尿が出たりす
ることもあります。
高血圧血圧が高いと、腎臓の血管が障害されやすいため、高尿酸血症に高血圧が合併していると、腎臓障害がより起こりやすくなります。また、降庄薬には尿酸値を上げるものもあるので、高血圧の治療を受けるときは、高尿酸血症の治療中であることや服用している薬について、医師に伝えることが大切です。
脂質異常症血液中のLDLコレステロール(悪玉)や中性脂肪が増加しすぎたり、HDLコレステロール(善玉)が減少しすぎたりする状態で、動脈硬化の危険因子となります。高尿酸血症の患者さんの半数以上に、脂質異常症の傾向があるといわれています。
耐糖能異高くなった血糖値が下がりにくい、いわゆる「糖尿病予備群」の状態です。高尿酸血症の患者さんには、耐糖能異常や糖尿病の合併が多くみられます。これらを併せもつメタポリックシンドロームを放置すると、動脈硬化が促進され、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞や脳出血などの危険性が高まり、命にかかわることがあります。高尿酸血症では、痛風発作の痛みに目が向きがちですが、さまざまな合併症が起こっている可能性にも注意が必要です。
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治療
痛風や高尿酸血症の治療は、「生活習慣の改善」と「薬物療法」に分けられます。薬物療法は、「発作を抑える治療」と「尿酸値を下げる治療」に分けられます。
発作を抑える治療
- コルヒチン古くから痛風の特効薬として使われてきた薬です。患部に集まる白血球の働きを抑える作用があります。痛風発作が起こる前には、「足の関節がムズムズする」「全身がゾクゾクする」などの前兆を感じることがあり、その段階で使うと、大きな発作に至るのを防ぐことが可能です。大量に使うと下痢などが起こることがあります。
- 非ステロイド抗炎症薬発作が起きたときに使う薬で、炎症や痛みを軽減します。内服薬と坐薬があります。内服薬の副作用には「胃腸障害」があります。なお、これらの薬には、尿酸値をコントロールする効果はありません。
尿酸値を下げる治療
発作が起こらないようにするために、また腎臓障害などの発症や悪化を防ぐために、尿酸値を下げる治療が行われます。尿酸値を下げる薬には、次の2種類があり、尿酸の排泄が不十分であるか、産生が過剰であるか、また、腎臓の働きが低下しているかなどの点から、薬が選ばれます。2種類を併用することもあります。
- 尿酸の排泄を増やす薬腎臓からの尿酸の排泄を促します。この薬を使うと、尿に含まれる尿酸が増加し、尿路結石ができやすくなるため、水分を多めにとることが大切です。
- 尿酸の産生を減らす薬肝臓での尿酸の産生を抑えます。「湿疹」などの副作用が起こることがあります。特に、腎臓の働きが低下している場合には、副作用が起こりやすくなります。
なお、尿酸値を下げる薬物療法は、痛風発作の最中に開始することはできません。尿酸値が大きく変動すると、痛風発作が起こりやすくなるためです。初めて発作を起こした患者さんは、痛みが治まったあとに、少量の薬から使い始めます。
治療法の選択
痛風・高尿酸血症の背景には、多くの場合、生活習慣の乱れがあり、どの患者さんも生活習慣の改善に取り組むことが重要です。病気の程度によっては、生活習慣の改善だけで尿酸値のコントロールが可能なこともあります。
しかし、痛風発作を繰り返したり、痛風結節がある場合は、生活習慣の改善だけでは困難で、薬物療法が勧められます。痛風発作や痛風結節がない場合、薬物療法を開始するかどうかは、尿酸値や合併症の有無によって検討されます。尿酸値が7mg/dlを超えていたら、また8m/dlを超えていても、合併症がなければ、まずは生活習慣の改善に取り組みます。8mg/dlを超えていて、合併症がある場合や、9mg/dlを超える場合には、薬物療法を考えます。
薬の服用の注意点
尿酸値を下げるための薬は、規則正しく服用することが大切です。尿酸値の急激な変動を避けるため、毎日きちんとのみます。のみ忘れたからと2回分をまとめて服用すると、尿酸値が大幅に下がって、痛風発作の引き金になるおそれがありますから、のみ忘れたときの対処法をあらかじめ確認しておくとよいでしょう。また、服用を始めると、尿酸値が下がってきます。しかし、それは薬の効果であり、検査の結果がよいからと自己判断で服用を中止すると、尿酸値が再び上がってしまいます。
そのため、医師の指示に従って服用を継続することが大切です。
痛風を防ぐ生活習慣
「食べすぎ、飲みすぎ」という生活習慣は、尿酸値を上げやすくします。改善点を見つけてみましょう。
「高尿酸血症と生活習慣」生活習慣の乱れに注意する
「痛風」や「高尿酸血症」の治療の柱の1つが「生活習慣の改善」です。薬物療法を続けると、尿酸値は下がりますが、薬の効果だけに頼らず、病気を招いた生活習慣の改善を図ることが大切です。
それが、高尿酸血症に伴うさまざまな生活習慣病や「メタポリックシンドローム」を改善することにもつながります。生活習慣の改善には、「食生活の改善」「適度な運動」「ストレスの上手な解消」があります。
食べ過ぎに注意し肥満を防ぐ「食生活の改善」
- 1日の摂取カロリーを減らす痛風の症状に悩む多くは、食事からとるエネルギー量が多すぎる傾向があります。食事中には新開を読んだりテレビを見たりするのをやめ、よくかんで味わって食べましょう。
- 食事を抜いてしまう朝食などを抜くと、次の食事でつい大量に食べてしまいがちです。できるだけ規則正しく食事をとりましょう。
- 夜、遅い時間に食べる食事と就寝の時間が短いと、消費されなかったエネルギーが脂肪となって蓄積されます。
プリン体を多く含む食品には注意する
食事からとるプリン体の線量が1日400mgを超えないようにすることが大切です。プリン体は、細胞の核などに含まれる物質です。食品の種類に関係なく、1つの細胞に含まれるプリン体の量はほぼ一定で、細胞の数が多い食品ほどプリン体の稔量は多くなります。特にプリン体の多い食品として、動物の内臓、魚の干物などがあげられます。
例えば、食品100g当たりプリン体が300mg以上含まれているのが、鶏レバー、真いわし干物などです。200mg以上含まれているものには、豚レバー、牛レバー、かつおなどがあります。
これらのプリン体を多く含む食品を、大量に、また頻繁に食べると、プリン体のとりすぎになりますから、注意します。
ただし、神経質になりすぎる必要はありません。例えば鉄欠乏性貧血がある場合には、レバーは鉄分を補うのに有効な食品ですから、1日の食事全体のバランスを考えてレバーを取り入れるなど、工夫すればよいでしょう。
プリン体の少ない食品には鶏卵があります。しかし、鶏卵にはコレステロールが多く含まれており、鶏卵をとりすぎるとコレステロール値が上がります。併せもっている生活習慣病も考慮し、バランスのよい、適切な食事内容にしていくことが大切です。
アルコールを控える
種類を問わず、アルコール飲料の摂取量が多ければ多いほど、尿酸値が上がります。これは、アルコールの代謝に伴って、尿酸がつくられたり、尿酸の排泄が妨げられたりするからです。
「痛風・高尿酸血症には、ビールはよくないが、ビール以外のアルコール飲料なら問題ない」との誤解も多いようですが、どんなアルコール飲料にも尿酸値を上げる作用があります。適量を守り、飲みすぎないようにしてください。l日の適量の目安は、例えば、日本酒なら1合、ビールなら中瓶1本です。また、飲酒しない日を設けるようにします。
2週間の禁酒が脂肪値を半分に はとても参考になります。お酒が多い人は2週間の禁酒を行うといいでしょう。
尿をアルカリ化する食品をとる
尿酸には、尿の酸性度が高いと尿中に溶けにくく、結晶化しやすいという性質があります。道に、尿がアルカリ性だと、尿酸が溶けやすく、排泄されやすくなります。患者さんには、尿の酸性度が高い人が多いので、尿酸の排泄を促し、尿路結石を防ぐために、海藻類など尿をアルカリ化する食品をとることが勧められます。
ただし、尿のアルカリ皮が高まりすぎると、尿酸以外の成分が結晶化して尿路結石ができやすくなるので、中性に近い程度に保つのがよいといわれています。尿をアルカリ化する食品の摂取も、バランスを考え、極端になりすぎないようにしてください。
梅肉エキスはアルカリ性に正し、血流も改善します。
水分補給は多めに
水分の摂取量が少なく、尿が濃くなると、尿酸が尿に溶けにくくなります。十分な水分をとり、薄い尿が多くつくられるようにすると、尿酸の排泄が促されると同時に、尿路結石がつくられにくくなります。
糖分などエネルギーを含む飲み物を多量に飲むと肥満につながりますから、エネルギーを含まない水やお茶などを多めにとります。
生活の中に運動を
適度な運動は、肥満を解消し、痛風・高尿酸血症の改善や、合併症の予防・改善につながります。ただし、呼吸を止めて強い力を出すような激しい運動(無酸素運動)は、尿酸値に悪影響を与えます。
適しているのは、「ウォーキング」など、十分に酸素を取り入れながら行う有酸素運動です。忙しいと、運動の時間を確保するのも難しいものです。「電車やバスを降りて1駅分歩く」「エレベーターなどを使わず階段を使う」「職場では遠くのトイレを利用する」など、日常生活の工夫でできるだけ歩くようにしましょう。歩数計で歩数をチェックしながら、徐々に歩く距離を増やします。
心身をリラックスさせる
痛風の方は、性格上、負けず嫌いで責任感が強く、精力的に行動するタイプの人が多いといえます。このような人は、つい頑張りすぎて、過剰なストレスを受けがちです。ところが、ストレスを自覚していなかったり、ストレス対策の必要性を理解していないこともよくあります。
生きていくうえでは、頑張ることも大切ですが、休養をとったり、のんびりと趣味を楽しんだりすることも大切です。尿酸値の上昇にはストレスも影響すると考えられています。頑張りすぎてストレスを受けているかもしれないと考え、心身の緊張を解きほぐすような、自分なりのリラックス法を見つけることも治療のひとつです。
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