鉄不足の治療

日本人の女性の1割は鉄欠乏性貧血

さまざまな原因で起こる「貧血」のなかで、鉄不足が原因で起こる貧血が「鉄欠乏性貧血」です。10年ほど前の国民栄養調査では、男女とも、どの年齢層でも、鉄の1日の所要量が満たされていない人が多いという結果が出ています。また、ある調査では、日本人女性の約1割が鉄欠乏性貧血であるということでした。

体内での鉄分の使われ方

鉄は、体内で合成されないので、食事から摂取する必要がありますが、食事から摂取する鉄のうち、体に吸収されるのはおよそ10%です。体内の鉄の多くは、赤血球中のヘモグロビンの原料となっています。一部は、肝臓などに蓄えられて「貯蔵鉄」となっており、鉄が足りなくなると、ここから供給され、ヘモグロビンの原料となります。

古くなって壊れた赤血球の中の鉄も、貯蔵鉄として蓄えられ、再利用されます。そのほか鉄は、わずかですが、筋肉、皮膚、粘膜などにも含まれます。これら体内の鉄は、汗や尿、便などと共に体外に出ていきます。この失われる鉄の量は、1日当たり、男性では普通約1mg、女性では1~2mgです。女性は月経があるため、男性より平均値が高くなっています。

吸収される鉄の量と、日々失われる量のバランスがとれていれば貧血は起こりません。また、もしバランスが崩れても、ヘモグロビンの原料として貯蔵鉄から鉄が供給されるので、貯蔵鉄がある間は、血液中の鉄の濃度は一定に保たれます。貯蔵鉄を使っている段階は貧血ではありませんが、「貧血予備軍」であるといえます。およそ40% の女性が予備軍の状態にあるといわれています。貯蔵鉄もほとんどなくなると、赤血球中の鉄の量が不足し、貧血が起こります。これが鉄欠乏性貧血です。

鉄の体内への取り込みと喪失

食事から摂取した鉄は、体内に吸収され、赤血球中のヘモグロビンの原料となったり、貯蔵鉄として蓄えられたりします。喪失量は1 日当たり男性約1mg 、女性1~2mg。体内に吸収される鉄の量よりも失う量が多く、貯蔵鉄もほとんどなくなると、鉄欠乏性貧血になります。

鉄欠乏性貧血の原因と症状

鉄不足になる理由

鉄が不足する原因として、次のようなことが考えられます。

  • 摂取不足
    偏った食事や、極端なダイエットをしている人が多く、栄養バランスが悪いことが考えられます。
  • 需要の増加
    体が大きくなる成長期や、妊娠、授乳期には、鉄の需要が極端に増加します。
  • 喪失の増加
    たとえば、「潰瘍、痔、胃がん、大腸がんや大腸ポリープ」などによる慢性的な出血や、「子宮筋腫」などで月経過多になった場合などは、失われる鉄の量が増加します。

鉄欠乏性賞血の症状

鉄欠乏性貧血になると、「疲労感、めまい、頭痛、動悸、息切れ、微熱、顔色が悪い、むくみ」など、一般的な貧血の症状のほかに、爪、舌、髪の毛などに、次のような特有の症状が現れます。

  • 爪がもろくなって割れやすくなったり、反り返ったりする。
  • 髪の毛の質が悪くなり、もろく、弱くなる。
  • 食べ物が舌にしみたり、ビリビリした痛みを感じる。
  • 口の端が切れやすい。

治療

鉄剤を、貯蔵鉄が回復するまで服用する

鉄欠乏性貧血は、赤血球やヘモグロビンが少なく、貯蔵鉄もほとんどなくなっている状態です。この段階に至っては、食事だけで鉄不足を解消するのは難しいので、「鉄剤」によって鉄を補給します。

この段階に至っては、食事だけで鉄不足を解消するのは難しいので、「鉄剤」によって鉄を補給します。

サプリにも鉄を含むものがあります。

もし、貧血の背後にほかの病気がある場合は、その治療を行うことが大切です。治療に使われる鉄剤は、吸収のよい鉄を50〜10喝含むのみ薬です。通常は錠剤で、1回1錠、1日1〜2回を、食後や就寝前に服用します。錠剤のほかにカプセル、子どもでものみやすいシロップや、注射などもあります。鉄剤は、ヘモグロビン値が正常になった後も、貯蔵鉄が回復するまで、さらに3~6か月、のみ続けることが必要です。

副作用

人によっては、吐き気や便秘、下痢などが起こることがありますが、通常は4~5日で体が鉄剤に慣れて治まります。しかし4~5日で治まらない場合は、胃薬と一緒にのんだり、食後に服用したりします。
それでも吐き気などが起きる場合は、担当医と相談のうえ、鉄剤の種類を替えてください。また、便の色が黒くなりますが、鉄の色なので心配はありません。

食事から鉄を摂る方法

再発予防には、バランスのとれた食生活が大切です。食生活は「習慣」なので、鉄剤による治療中から、鉄を多く含む食品を摂取するよう努めましょう。

鉄には、主に動物性食品に含まれる「ヘム鉄」と、主に植物性食品に含まれる「非ヘム鉄」があります。ヘム鉄は吸収がよく、非ヘム鉄はヘム鉄より吸収が悪いという特徴がありますが、両方をバランスよくとることが大切です。また、以下のような食べ方の工夫も必要です。

  • ビタミンCを一緒に摂る
    ビタミンCは、鉄の吸収を高めます。ビタミンCを多く含む野菜や果物を一緒に食べましょう。
    ビタミンCを多く含む食品はこちら。
  • ゆっくりよく噛んで食べる
    胃酸は鉄の吸収を高めます。ゆっくりよくかんで、胃酸の分泌を高めましょう。

定期的な検査

鉄欠乏性貧血に限らず、一般に貧血はゆっくり進行するので、疲労感や頭痛などの症状も、体質や年齢のせいと勘違いしがちで気づきにくいものです。
貧血の背後に別の病気が隠れている可能性もありますし、貧血を放置すると心臓に大きな負担がかかりますので、定期的に血液検査を受けることが大切です。