うつ病は心の病か?

うつ病は、必ずしもわかいにく病気ではなく日常的に使っている言葉やイメージによってきちんと理解を求めていくことができます。

  • うつ病は心の病気です。心も体と同じように、病気になることがあります
  • 「うつ病は心が風邪をひいたようなものです」

最近、こんな説明がよく聞かれます。とくに「心の風邪」ということばには、「だれでもかかる」「ちゃんと治療できる」「こわがりすぎる必要はないが、放っておくとめんどうなことになる」というメッセージが込められているようで、工夫されたいい方だと思います。

けれども、正直にいうと、私はこれらのいいまわしに対してどこか違うような違和感があります。以前、ある方から、「心のかぜ」だなんて、とんでもないですよ。もっとうんとつらいし、なかなか治らないし…と、いかにも腹立たしそうにいわれたことがあり、それも違和感を持つひとつの理由になっているのかもしれません。

ただ、もっと基本的なこととして、「心」ということば自体が持つニュアンスがあります。たとえば「心があたたかい」「心がまっすぐだ」「心が通じる」というようないい方から、日本語の「心」ということばには、ひとがらしせいその人の人柄やものの感じ方、生きる姿勢などに深く結びついている部分があるように息えるのです。考えすぎなのかもしれませんが、「心の病気」と聞くと、なんだかその人の人間性そのものにゆがみや障害が起きているような印象を受けてしまいます。

そういうイメージは、精神科医としてけっして持ちたくないものなのです。

うつ病は「気分の変調」が起きる病気です。統合失調症は「思考のまとまり」がつきにくくなり、不安障害では危険を感じて自由に動けなくなります。

それらはどれも、私たちの「脳神経の働き」と関係していることが、ある程度までわかっています。このように、いろいろな精神的な不調については、「心」という、あたたかいけれどあいまいなことばを使わなくても、きちんと説明することができます。

みなさんも、うつ病について、なるべく身近で具体的なことばやイメージで理解していってほしいと思います。うつ症状に悩む本人も、周囲でサポートする人にとっても、「ふつうのことば」による理解が、症状の改善へと向かう大きな力になるはずだと私は思います。

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遺伝や家族との関係性

うつ病と遺伝の関係ははっきりとわかっていませんが、家族にうつ病を発症した人がいる時には、精神的な距離を保ちながら見守りましょう。

うつと遺伝や家族との関係性についても、関心が集まる話題のひとつです。たとえば、「母親がうつ病でしたが、自分はだいじょうぶでしょうか」「同居している家族がうつ病になったのですが、なにか影響がありますか」というようなことです。

まず、遺伝に関する医学的な見解ですが、双極性障害(いわゆる操うつ病) についてはある程度遺伝の関与が考えられていますが、うつ病に関しては、はっきりしたことはわかっていません。

思い出してほしいこととしてうつ病はたいへん多くの人がかかっている病気だということです。女性のうつ病の生涯有病率は10~25%という高い数字です。

25% といえば4人に1人ですから、同じ家族のなかにl人、2人とうつ病の人がいても、さほど不思議なことではありません。科学的にはっきりわかっていないうつと遺伝の関係を心配するよりも、自分自身のうつを防いでいくためにできることを考えていくほうが、ずっと前向きです。

性格は、遺伝的な要因と環境的な要因がからみ合いながら形成されていきますから、自分の性格を理解して、環境との相性を考えていくのは、心の健康にとってだいじなことです。

たとえば、長年二人で暮らしてきた夫婦のうち、まず夫がうつ病を発症し、あとを追うように妻も発症するというように、家族のなかでだれかがうつ病になると、他の家族メンバーにいろいろな影響が出てくるということはたしかにあります。

これにはいろいろな理由が考えられますが、一般的にはやはり、いわゆる「巻き込まれてしまう」ということが大きいのではないかと思います。家族のだれかがうつ病になったときには、うつ病になった当人からも、自分自身からも、意識的に少し精神的な距り離を保ちながら、長い目で見守っていくということが、大切です。

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性格とうつの関係性

精神的な健康をためていくためには自分がどういう人間かをそれないりに知って、その持ち味を生かしながら具体的な問題に取り組んでいくことが大事です。

「私はうつ病になりやすい性格らしいのですが、これを変えることはできないのでしょうか」という相談を受けることがありますが、そもそも、うつ病になりやすい性格というものはあるのでしょうか。

ドイツの精神科医フベルトゥス・テレンバッハは、1961 年に出版した著書のなかで、「メランコリー親和型性格(うつ病に親和性のあるきんべんせき性格)」として、まじめで勤勉、責任感が強く、秩序やルールを大事にし、誠実で道徳心が高い、などを指摘しています。

また、日本絹神科医の下田医師はそれより30年ほど前に「執着性格」の人が操うつ病(現在は双極性障害と呼ばれているものですが、実際に研究に協力した人たちの大半はうつ病でした) になりやすく、特徴として、仕事熱心、凝り性、正直、几帳面、正義感が強い、などとしています。

ただ、結論からいうと、性格を変えようという考え方は、基本的にはおすすめできません。なぜならば、性格はそう簡単に変えられるものではありませんし、「こんな性格がうつになりやすい」というよりも、性格と環境の相互作用が「うつのなりやすさ」に大きく関与していることが、最近の研究でわかってきたからです。

たとえば、人間関係のこじれは、うつを引き起こしやすい誘因のひとつですが、とくに人づきあいをだいじにするタイプの人は、自分の意見がみんなに反対されたりすると強いストレスを感じます。

いっぼう、どんどん新しいことに挑戦していくようなタイプの人は、人間関係上の多少の摩擦は平気でも、自分が情熱をそそいだ仕事がうまくいかないと、まわりがびっくりするほど落ち込んだりします。

まず、自分の性格を受け入れて、だいじにする。そして、自分が力を発揮できる状況や、逆にストレスやプレッシャーを受けやすい環境を、少しずつでも把握していきながら、いま自分が直面している具体的な課題にひとつひとつていねいに向き合っふせていく。
そういうスタンスが、うつを防ぐという意味でも大きなポイントになります。

性格的にがんばりすぎる人ほど、むりをしてストレスをため込んでしまい、その結果うつを発症するというケースは多いのですが、そのきっかけとなるのは、昇進や退職、結婚や離婚などといった、大きな環境の変化です。

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うつ状態とうつ病

普段の生活で私たちが感じる軽い気分の落ち込みと病気としてのうつは本質的には区別することができません。
このことには非常に大事な意味が含まれています。

うつ病、うつ状態、抑うつ状態、抑うつ感、うつ的な気分など…。単に「うつ」といういい方もあります。それがよくわからない、混乱するという人もいます。

「うつ状態」というのは、気分が沈み込んだ状態を表すことばです。普通に暮らしている人がなにか失敗をして落ち込んでいるのも、うつ病の人がなにもやる気が起こらなくて沈んでいるのも「うつ状態」です。

不安障害の人や統合失調症の人が自信をなくしてふさぎこんでいれば、それも「うつ状態」と表現できます。抑うつ状態、抑うつ感、うつ的な気分なども、ほぼ同じ意味と考えてかまいません。

一方「うつ病」ということばは、うつ状態を中心とする症状があって、本人がとても苦しい思いをしたり、仕事や暮らしに具体的な支障があったりするときに、治療が必要な病気だという意味で使われます。

ロバート・プロ主ンという学者が行った双生児を対象にした実証的な研究によれば、私たちが日常的に経験するような軽い気分の落ち込みから、病気と認められるほどの強い抑うつ感までは、連続的に変化していて明確な境界線を引くことができなかったといいます。

この科学的な事実は、私たちに2つのことを教えてくれます。ひとつは、うつ病の治療では、いっぺんによくなろうとするのではなく、いま因っている具体的な問題をひとつひとつ解決しながら、少しずつ症状を改善していくようにしようということです。

うつ病の気になる症状や問題をすべて解消することはなかなかできませんから、「病気か、治ったか」という二者択一的な発想が強すきると、、かえって自分を追い詰めてしまいがちなのです。

もうひとつは、これからうつ病の治療ということだけでなく、私たちがふだん出会うちょっとした気分の沈み込みをコントロールする知恵としても、応用できる部分が多いということです。

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うつを引き起こすきっかけ

うつ病にも「誘因やきっかけ」のようなものがいくつかあります。けれども、これといって思い当たるきっかけがないままにうつ状態を強めたリスする人もいます。

よく聞かれる質問のひとつに「うつ病になりやすいのはどんなときですか? 」という質問があります。たしかに、うつ病やうつ状態につながりやすいきっかけのようなものは、いくつかあげることができます。

けれども最初にいっておきたいのは、きっかけがないままにうつ病になる人もいるということです。ときどき、「どう考えてもうつ病になるような原因も理由もないので、自分はうつ病ではない」という人がいますが、とくに誘因がないうつ病というのも、めずらしくはありません。

うつになりやすいきっかけとしては、まず人間関係があります。とくに、たいせつな人との別れです。とても好きあっていた恋人と別れなけなればならなくなつた。ずっといっしょに暮らしてきた人が亡くなってしまった。そんなときにはだれでも非常に落ち込んだ気持ちになります。

絶対に失いたくないという気持ちにこだわる人もいますし、一生懸命忘れようとする人もいます。相手の欠点ばかりを数えあげて自分を慰めたり、楽しかったことを思い出してはまた悲しくなる人もいるでしょう。

いずれにしても、かけがえのない人を失ってしまったという気持ちから、うつ状態になることがあります。たいせつな相手とのコミュニケーションギャップも、うつ状態への誘因のひとつです。

自分のことを理解してくれていると思っていた夫の気持ちがわからなくなった。信頼していた上司から思いがけない批判を受けた。

たとえばそんなときです。マリッジブルー、マタニティーブルー、昇進うつ病、引っ越しうつ病ということばがあるように、結婚、出産、昇進、引っ越しなど、おめでたいはずのできごとがうつのきっかけになることもあります。

自分の役割や環境の大きな変化と関係がありそうです。自分の行動に積極的な意味が見いだせなかったり、目に見える成果がなかなか上がらなかったり、よい評価が得られない状態が続いたりしたときにも、うつ状態が起こりがちです。

気分の落ち込みに気づいたときには、最近なにかストレスになるような仕事や生活の変化がなかったか、ちょっと振り返って考えてみてください。重い病気やケガ、離塘、死別、退職、結婚、妊娠、出産、昇進など、自身の環境を大きく変化させる人生の重大なできごとをきっかけとして、うつ状態になるケースが多くみられます。

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